「この次の川まで一気に走れ!」
その伝令が伝わるやいなや、川岸を駆け上がり、早駆けで突進した。
ボンと飛び込んだ第二の川は──
それは、初めて目にする地獄の入口であった。ここに二十、その先には三十ほどの、襟章の赤い友軍の死体が半ば焼けた状態で、膨らんだまま並べられていた。火葬の途中で放置されたものだ。
荻港では、戦死者が出れば、それぞれ丁重に安置して葬送する余裕があったので、この光景には驚いた。頭を上げれば、弾丸が容赦なく飛んでくる。耳が音に麻痺したのか、まるで暴風の中にいるような轟音だけが聞こえる。ただ神経だけは、意外にも平静を保っていた。これから前進すべき約六百メートルの山裾に向かう水田に備え、鉄帽のあご紐を締めた。
一斉に川を飛び出し、水田を強行横断する。分解した銃や弾薬箱をかついで──
稲は一尺ほどだったか。走る太腿まで水に浸かり、思うように走れない。右手から無茶苦茶にチェッコ機銃が鳴る。身体の周りの水が跳ねる。走る、水が跳ねる。
中隊は一丸となって黒い塊のように突進した。号令「前進」などの余裕はない。連隊はすでに最後の時期にきている、と聞いていた。
弾丸の飛来が一瞬だけ弱まった。敵に対して死角となっている小山の麓にたどり着いたようだ。
皆、最後の力を振り絞っての水田通過であった。
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