アリの顕微鏡観察
私は生物教師だった。生物教師として紹介したい生物の実験がある。アリの顕微鏡観察である。この実験は材料のアリが手に入りやすく、実物を顕微鏡観察した時の驚きが大きいことから実物を観察することの大切さを学ぶことができる。特に驚き(感動)を体験してほしい。
しかし、アリはそのままでは直接には顕微鏡観察できない。光が透過しないからだ。そこでアリを脱色する。脱色をすれば光が透過してアリの形態を顕微鏡レベルで観察できる。アリの鋭い顎や脚、複眼、触角、気門なども観察できる。この方法は葉脈標本の作り方とほぼ同じだ。以下にその方法を紹介する。
【実験方法】
① まずは、アリの絵を想像で描く。
ポイントは、頭部・胸部・腹部に分かれているか、脚は何本か、脚はどこから出ているか、節があるかなどである。児童生徒が想像で描いたアリはみなしごハッチみたいにかわいらしい絵が多く、正確なスケッチには程遠い。
② アリを採集する。
大学の時の学生実習で「アリの垂直分布」調査というのがあった。鹿児島県と宮崎県の県境に位置する韓国岳だったと記憶しているが、山を下りながら高度100mごとに5分間アリを採集する。この調査によって、高度ごとにどんなアリがどのくらい生息しているかが分かる。
アリの採集方法は、つまんでしまうとアリの形態を壊しかねないので、指先に唾をつけてアリをくっつけて素早く試験管に入れる。これは非常に効率よくアリを採集できる方法だが、この方法は50年近く昔のやり方であり現在はしないだろう。非常に不衛生だ。アリの体表にはどんな細菌やウイルスが付着しているか分からない。衛生的な方法で工夫して採集をしよう。
③ 10%水酸化カリウム水溶液を入れたビーカーに採集したアリを入れ、十分に煮沸するまで加熱する。
煮沸されるアリには気の毒だが、提供された命を大切にする意味でも真剣に実験に取り組み、新たな知見を得よう。