錦生は毎朝繰り返される追い抜き合戦に負けるのが嫌いで早足で門に向かう。妙なところが負けず嫌いだ。柊も合わせて足を動かした。
「あ、グループ連絡ありがとう。学園祭の打ち合わせ、もう今日から始まるって?」
「ああ、昼休み、文化部代表に招集(しょうしゅう)がかかってる。去年と変わったところがないか聞いてくる」
「うん、今年は二年と一年でやらないといけないから、何でも相談してくれよな」
「もちろん」
「とか言いながら、柊は何でも一人でやっちゃうからな。役割分担ちゃんとしてくれよ」
「あ、うん、あ、それと、放課後、富樫(とがし)先生が部活に参加するって」
「へぇ、とがしんが? 珍しいね」
「二学期初日くらいはと思ってるのかな。書道部と掛け持ちだから、忙しそうだけど」
文化部、茶道部の活動は基本月曜日と水曜日。今日、一日、月曜日は始業式のあと、普通に授業があり、放課後部活が始まる。月に一回程度、外部の茶道講師を招いた稽古もあるが、基本は、先輩方から受け継いだ季節ごとのお点前を繰り返し稽古し、年間数回の茶会を開いている。その中でも一番大きな茶会が学園祭だ。二日にわたって開催される。
「よし、抜かれなかった!」
後ろから迫り来るテニス部の面々に抜かれることなく校門に到着し、錦生が変なガッツポーズをした。
「朝からそんなに体力使って疲れないのか」
「抜かれると、朝から負けっぱなしな感じがして嫌だ。柊こそ、爺臭いよ。達観(たっかん)するには若すぎる。そうやって何でも人に譲ってたら、ほしいもんなんか何にも手に入らないぞ」
反論の論点がずれているような気もしたが、錦生が言いたいこともわかるような気もして黙っていた。
「相変わらずうちの高校はすごいねぇ」
錦生が校舎を見上げて言った。
校舎には通過する電車に見える角度で何枚も垂れ幕が下がっている。すべてスポーツ関連の選手の活躍を報じるものだ。国体、インターハイ、全国大会代表、入賞、優勝等。当然のように野球部甲子園出場の垂れ幕もある。
【イチオシ記事】雨でずぶ濡れの女を家に上げた。脱衣所に散乱した下着を見て、パンティーを出してやるのを忘れたことに気づき…
【注目記事】「僕らは相性がいいかもしれないな」——「ためしたら?」と言うと彼は、「僕の可愛いお嬢さん。いけない子だなぁ」と言って…
ゴールドライフオンライン(GLO)は、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン(GLO)編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp