「もののあわれ」とは、こうした季節感のなかでの人間関係の情感をいう。恋愛であれ、パパ活であれ、現代の男女交際に最も欠けているのは、この季節感のなかでの情感ではないだろうか。

源氏の六条御息所への忍びは、六条御息所の身の回りの世話をする中将君が「もうお帰りあそばせ」と合図することで終わる。

一番鶏がなく三時半頃、「霧のいと深き朝、いたくそそのかされたまひて、眠たげなる気色にうち嘆きつつ出でたまふ」状況に、四時半頃、御格子一間を開けてパッと外の光を入れ、几帳を引き上げる。

源氏は名残おしく、もさもさ出てきて、前栽(せんざい)をながめてすぐに帰らない。

中将の君が六条御息所に「見たてまつり送りたまへ」と言えば、六条御息所は「御髪もたげて見出したまへり」。

前の晩激しすぎたのか、眠そうなのだと、瀬戸内寂聴は現代語訳する。

瀬戸内の解釈は、瀬戸内の愛憎経験を色濃く反映したものである。物語では性交渉があったかどうかは不明である。

中将君は仕事とはいえ、きりっと情事終了を取り仕切る。

源氏は六条御息所からの帰り際、中将君の腰つきをみて廊下の高欄の角に追いつめ、「咲く花にうつるてふ名はつつめども」といいつつ「折らで過ぎうき今朝の朝顔」と手を握る。

とんでもない移り気な源氏である。すると中将君が「朝霧の晴れ間も待たぬけしきにて花に心をとめぬとぞみぬ」と返し、「主人の花をどうするのよ」とはぐらかす。

確かに、夜明けまでの勤務の後で、行きずりを受け、落子をもうけるのはつらい。中将君は、源氏の移り気を、きっぱりと断った。

 

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