【前回の記事を読む】姑息なチャラ男の淫乱小説にもみえる『源氏物語』の男女関係…現代人の感覚では姦淫罪、重婚罪、監禁罪等に該当する事例ばかりだが……
第1章 前近代の男女交際と家族制度
1-2 太パパ源氏の家族とライフヒストリー
『源氏物語』の男女関係
源氏の女性関係の特色を概観すると、以下が指摘できる。
・高貴など身分が女性の価値、男性の性的興味、または身分不相応による女性の源氏忌避になっている。身分が、性愛、色好みに影響している。
・不貞を犯した義母藤壺および、その姪で藤壺に容姿が似た紫の上に対する情念が基本になっている。
・女性は、最後は出家という結末で終えている。皇室女性による伊勢神宮奉仕のための斎宮奉職で、性愛を断った皇室女性もある。斎王は伊勢に赴く前に京都郊外の野宮で一定期間斎戒生活する。六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)がこれにあたる。
『源氏物語』は物語であって、史実として学術分析するものではないとの批判もある。
しかし、皇后や東宮妃(皇太子妃)との不倫など、この際どいテーマの物語を当時の貴族が先を争って読んでいたという事実は、この物語が単なるフィクションではなく、かなりのリアリティをもった男女交際ノンフィクションであったことを示している。
六条御息所とあわれ
『源氏物語』のクライマックスのひとつは、源氏が、恐れ多くも、前皇太子妃(東宮妃)である六条御息所の元へ通い、その後、夜離(よが)れになる場面である。
源氏は、前東宮妃という六条御息所の高貴と若さに色好みして危ない密通のリスクを越える。しかし、六条御息所と源氏との年齢差・気位の高さゆえの夜離れが続く。
男女関係は、年齢差や社会的立場を越える時エクスタシーを迎える。
しかし、人間には飽きがある。徐々に年齢差や立場の違いによるすれ違いで、嫌気がさす。かくて、夜離れとなった六条御息所の生霊(いきりょう)が、源氏と情交する他の女性にとりつき、これを殺してしまう。
源氏が通わなくなった六条御息所は、生霊で葵の上も夕顔も殺してしまう。六条御息所は己の強い情念が自分でも嫌になって、皇室の伊勢祭祀に関わる斎王として伊勢に出奔しようとする。