【前回記事を読む】愛猫を火葬する日は豪雨だった。1時間後、骨だけになった姿を妻と見つめ……翌日、私は愛猫に似た猫の画像や動画を探し続けた

悲しみの底で見つけたもの~猫さんが生きた八十九日間の記録

五月八日(木)

夜、久々にあの娘の優しさを思い出して泣く。四月二十六日と二十七日の荒れ方を見て、それまではどんなに怒って攻撃してきても、手加減してくれていた事に気づかされた。本当に優しい猫だった。

そして、正気に戻り数日間を生き延びてくれた。私の誕生日を命日にしないように。

本当に、猫らしくない優し過ぎる猫だった。

五月九日(金)

夢を見た。猫さんがお風呂場にいるのを見て「あ、忘れていた」と言って猫さんを裏返しにして膝の上に乗せ、歯を磨いてやろうとした。その時「うにゃ」か「キャ」と声を発したような気がしたが判然としない。

そこで目が覚めた。ああ、もう歯磨きしてやる必要も無くなったんだ。虚しい風が胸の中を吹き抜ける。だが、猫さんは約束を守ってくれた。夢に出てきてくれたのだ。

生きて行くために必要な些細な手助けも、私と猫さんを幸福で結びつけていた事に今更ながら気づく。歯磨き、ブラッシング、爪切り、シャンプーは猫さんが嫌いな四大お世話だが、私はやっていて楽しかった。彼女だって終わった時にはちょっぴり怒っていたが、すぐにさっぱりとした顔を見せていた。