私のように考える人はあまり多くはなかったようだ。みんな、プールにくることを、世の中という漠然とした他人に遠慮したり、あるいは本当に心配で躊躇したりしているのかもしれない。それは、誰も誘わずに一人きりで来た理由でもある。
先の見えない不安を振り払うかのように、途中からがむしゃらに水面をかいた。本当はそんな気持ちのときほど、力まず、水に抵抗せず泳いだらいい。
そんなことは経験上よくわかっていたが、バシャ、バシャと音を立て、わざと水しぶきが上がるような泳ぎ方をして頭の中を空っぽにしたかった。今までだって、そうやって自分の気持ちに折り合いをつけてきたことがずいぶんあったから。
人が見たら、みっともない泳ぎ方をしているだろうな、とふと余計なことを思う。大丈夫。誰も見てなんかいない。真っ白な水の泡をこれでもかと上げながら泳いでいるうちに、「無」になっていく。
五十メートルプールをクロールや平泳ぎで軽く十往復して、一時間ほどでプールを後にした。
結局、「ロックダウン」のうわさが流れたり、開催予定だった記録会が中止になったりした後、大学でのすべての活動自粛・休止が決まり、自宅待機となった。決まってしまうと本当にあっという間だった。
春休みで授業がない期間だったので、表向きはそこまで大きな混乱はなかった。新学期の授業の見通しが立つまで、継続した研究等で許可を得た学生以外、キャンパスには立ち入ることができなくなった。
そして、新年度が始まってもしばらくはオンラインでの授業になるのではないか、という情報が流れてきていた。まさか、自分の大学生活が一年過ぎたこの時期に、にわかにこんな事態に見舞われるとは思いもしなかった。なんで自分だけ、なんてことは、ちっとも思っていない。
そんな考え方はしてこなかったし、被害者意識とまでは言わないが、そんなふうに思う人のことをどちらかというと内心冷めた気持ちで見ているようなところもあった。