【前回記事を読む】高校で理系を選んだが、微分も積分も本質的には分からなかった…それでも医学部へ進んだ理由は…
2 プロの「手前」 〜教育と仕事始め〜
(1)教育について
問い4「院長が、医師を指導したり教育したりする事はあったんですか?」
今はクリニックで、一人院長の一人医師だからね、あまり医師を指導する事はありません。ただ20年前ですが、市内の中核病院にいて、その時小児科医長だった。小児科研修ローテートが始まったので、私もちょっとは教えないといけない時期があった。
研修医への教育っていうのは、同じ職業だからか厳しくなってしまう。医師として同じ目を持ってほしいからだろうか? 研修医は1年で12人、おのおの2カ月たったら去っていく。
その頃、小児科研修は必修項目、つまり新人研修医はだれでも小児科の研修を受けなければならない時期で、将来小児科医になりたい連中がくるわけでもなかった。次にお話しするのはそういう頃の事件だった。
ある日曜日の午前、その前日から研修医とみている川崎病の患児の熱が下がらず、血液製剤の免疫グロブリンの使用となった。その研修医は将来整形外科医になりたいとの事だった。川崎病で使うグロブリンという医薬品は血液製剤だから、親への説明も気をつかうし、「こういうふうに説明して」と細かい所まで研修医に教えていた。
実際に親にも私が横につきながら、説明してもらったのだけれど、なんと「説明の途中ですみません、今日は日曜日でこれからサッカーの審判に行かないといけないんです」といって親への説明の途中で研修医は外へ行ってしまったんだ。
患者さんも唖然としていたし、私も目が点になった。「あっさりしてるよな、でも整形外科のスポーツ医学も面白い分野だし」と思い、「まあいいか」と割り切っていたのだけど、実は毎週末に同じような事が続いたんだ。
この研修医には最後にちょっとお説教した。これは僕が間違ってるのかもしれないし、よくわからない所もあるのだが。
まず一番二番三番四番と紙きれに書いた。中身はまだ書いていない。
目標についての話だ。目標には必ず優先順位があるが、彼には根本がわかっていないようなので、
まず4番……良いサッカーの審判になる事
次に3番……良い臨床整形外科医になる事
2番…………良い医者になる事
君はどれになりたいのかな? 良い臨床医になるためには、最初の3年で勝負は決まってしまうよ。4番から上に上がって行く事は、多分3番までもいかないと思う、だって4番はあなたの仕事じゃないのだから。1番の最大優先目標を遂げるためには、4番は捨てていいんだ。しかし彼にはわからなかったようだ。僕の話は大抵わからない。