【前回の記事を読む】警察官になる気は無かったのに、警視庁の筆記試験も身体検査も通過…落ちるつもりで臨んだ最終面接で「福岡県警を受けなさい」と言われ……

前編|生い立ち

青天の霹靂

土日はアルバイトがなく自由に過ごせたので、アパートの近くにあった中古車廃車の解体屋のオヤジさんと仲良しになり、そこで中古車を物色しました。

私には、車を持つことが昔からの憧れだったのです。生まれて初めて購入したのは三六〇ccの軽自動車で、値段は現物のまま車検付きで五万円でした。アルバイトをしてやっと自分の愛車を手に入れたことに感動し、車をどんどん利用して多くの思い出を作ろうと意気込みました。

ところが、格安だったのはポンコツ車だからだったようで、箱根の坂道などを走ると背後に白い噴煙が渦巻き、バックミラーがかすむほど排気ガスを撒き散らしていました。周囲にそんなポンコツ車はなかったので、運転している自分も恥ずかしい気持ちがしました。

一応デート用として買ったのですが、乗ってくれるような女性は残念ながらいませんでした。

工場のアルバイトを始めて半年ほど経った頃、他社と合同での一泊バス旅行の話が、会社の互助会を通して回覧されてきました。

毎日、工場で機械とにらめっこだけではつまらないし、旅先で何かいいことがあるかもと思い、期待で胸を膨らませて仕事仲間の社員の方と二人で参加しました。旅のテーマは“秋の上高地・登山と周辺散策”でした。そこでの女性との出会いが、その後の私の運命まで変えてしまうことになろうとは当時知る由もありませんでした。

バス旅行には選べるアクティビティがあって、秋の上高地を散策するコースと奥穂高を登山するコースの二つがありました。

同行した知人は登山服スタイルで参加してきており、見るからに登山を希望していましたが、周囲の人たちの様子を見たところ散策コースのほうが圧倒的に女性が多かったので、私は知人を何とか説得して散策コースに変えさせようと思いました。「きっと楽しいよ」と誘ったら彼も納得してくれて、作戦通り上高地散策コースにできました。

ツアーに参加していた半数以上が神奈川県内の会社に勤務する人たちで、いろんな大企業から参加していました。

そこで仲良くなった二人組の女性がいました。宿泊先で夜トランプをするうちに一人の方と出身地が近いことがわかり、それから会話が合ったのか気が合ったのかわかりませんが、その後お付き合いを始めました。その女性が、今はわが家で権勢を誇っている女房です。

妻の会社は大企業で多くの同僚は社内結婚が当たり前でしたので、就職も決まっていない不安定な身の私と、石橋を叩いても渡らないほど慎重な妻がなぜ結婚しようと決めたのか、これまで一度も聞いたことがありません。

「人間万事塞翁が馬」 の諺のように人生は本当にどうなるかわからないものです。いつどこで、新たな運命と出会うかわからない、だから人生は楽しいのではないでしょうか。