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葵が1歳3か月になった頃、渉は新しいアパートに引っ越した。
近くにスーパーがあって、保育園が徒歩5分で、コインランドリーがある。それだけで選んだ部屋だった。
引っ越しの日、千春の日記だけを持っていくことにした。新しいアパートのリビングに、千春の写真を飾った。結婚したときに撮った写真だった。千春が笑っていた。
葵が泣き止まない夜というのは、必ずあった。
「ほら、ほら。泣かなくていいよ」
渉は薄暗いリビングで、背中をトントンと叩きながら、葵を縦に抱いた。アパートの薄い壁越しに、外の雨音が聞こえた。時計は夜の11時を回っていた。
葵のぐずった声が、薄暗い部屋に響いた。渉のTシャツをぎゅっと掴んでいる。その小さな指の力が、なぜかいつも胸に刺さった。
(千春、ちゃんと育っているよ)
声に出したら泣いてしまうから、いつも心の中だけで話しかけた。
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次回更新は10月7日(水)、22時の予定です。
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