到着
三日後、予定通りカラチからリヤドに向かった。リヤドはサウジアラビアの首都で、内陸部の砂漠地帯にある。リヤドに着いて驚いたのは、短時間屋外に出ただけで頬がヒリヒリとすることだった。その時の気温は四十五℃を超えていた。
そこまで高温だと、暑さより痛みを感じるのだとわかった。そのうえカラカラに乾燥して湿気がないため、汗は出ない。
この気候の中で一年働くのか。大変な仕事を選んでしまったものだと思ったが、もう後戻りをするわけにはいかない。
リヤドで給油して最終目的地のジェッダに向かった。ジェッダは、首都リヤドに次ぐ紅海に面した大都市だ。
ここで私達は入国審査を受けなければならない。初めての海外、初めての入国審査、しかも中東だ。ここまで来て入国できなかったらどうしようと少し不安になった。隣を見ると弟も心配そうな顔をしている。
そんな私達の様子を見て、日本から一緒に来た千代田化工建設の社員が入国審査書類を指さしながら笑顔で、ここに仏教と書いておけば問題ないから大丈夫だと言う。
サウジアラビアの入国審査の書類には、信仰している宗教を記入する欄がある。国民全員がイスラム教を信仰し、イスラム教の厳しい戒律を守りながら暮らしている国だからこそ、入国する外国人の宗教についても重視しているのだろう。
私と弟は言われた通りに仏教と記入し提出し、入国審査の窓口に並んだ。
無事パスポートに入国スタンプを押され空港の外に出ると、私達を待っていたのは迎えのトラックだった。私達は荷物と一緒にトラックの荷台に乗り込んだ。
トラックに揺られながら街を進むと、何とも言えない異様なにおいが鼻をつく。
厳しい暑さはリヤドで既に体験していたし、ジェッダは港町なので内陸部のリヤドより気温がやや低いように感じた。しかしにおいは独特だった。食べ物のにおいでもなく、家畜のにおいでもない。ジェッダは年間を通してほとんど雨が降らない町だ。極端に乾燥した中で人間の生活のにおいが蓄積して凝縮されると、こんなにおいになるのだろうかと私は考えた。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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