【前回の記事を読む】「あなたなのね、耳を貸してくれたのは」“あの男の本命”だという女性は、私の耳をじっと見つめ……
耳
耳に残る ほのかと朝子、そして……
パン屋のイートインで、ほのかにとってのライバルの女性は、落ち着いた様子で話してくれた。いつからか嫌悪感や嫉妬心も薄まっている。
「彼と出会って調べたの。耳占いについて」
「み、耳占い?」
「そう。あら、速水ははっきり伝えてなかっのたかしら。私の耳の大きさ、形、穴の具合、皮膚の色合い、全て理想形で初めて出会えたって」
自信たっぷりにそういう彼女の耳は、なるほどかぶれも治ったのか白く艶めいてしかもぽってりと色っぽく映った。
「でね、ネットに書いてあったの。34までは左耳。35からは右耳に意味があるんですって」
「そんな、左右って似ていませんか」
必死で彼女に向かって交互に耳を差し出した。知らない人が見たらさぞ滑稽だろう。
彼女は私の右耳の穴の入り口をさすった。
「もしかしたら、ここに薄いホクロがあるからかしら。左耳とは明らかに違うわね。そして、私の黄金の耳とは違うのね」
「黄金……」
「なんかね、速水に言わせると私の耳は光り輝いているって。仕事柄、いつもお金のことばかり扱っているでしょう。その黄金とは違って、彼にほんとうの意味で幸せをもたらせる光なんだって」
彼女はそういい残して去っていった。残されたほのかは店の飾り窓から見送った。
洋服と髪だけは若いけれど、体型もお顔もどう見てもシニアのそこらのおばさん。でも秘密を知ってしまったほのかにはとてつもなく輝いて見えた。