【前回の記事を読む】米国でも実現しなかった……若手たちが不眠不休の24時間作業で挑んだ世界初のソフトウェア開発とは
パート1 「世界初」で「殿堂」入り―日本のデジタル産業黎明期の東芝
火力発電所のタービン発電機、ボイラーのデジタル全自動スタートアップ
1968年5月から、タービンの実機の特性をアナログコンピューターでシミュレーションし、そのプログラムを入れた実機のコンピューターを組合せてテスト。出荷後現地に行って、実機にローディングし、実機テストに臨んだ。6月から7月初めまで、不眠不休に近い突貫作業でソフトの調整が続いた。
いよいよ試運転。前日は朝3時まで調整をして、数時間仮眠の後、朝7時から実タービンで実機テストに入った。真夏だったが、コンピューター室は19度と寒い。当時のハードはこれでないとすぐ止まってしまう。24時間ノンストップで動くようになった時は、こ踊りして喜んだ。
いよいよ世界で初めて、コンピューターから直接出すパルスでタービンの蒸気弁を開閉し(DDC:ダイレクト・デジタル・コントロール)、蒸気を通してタービンが回りだす瞬間がやってきた。このときの緊張感と高揚感は今でも忘れられない。
途中、急に蒸気弁を開き、タービンが急加速しだして、タービンの試験員から怒鳴り込まれたこともあった。
しかし、その後はタービンが定格回転になり、これも世界で初めて微調整しながら系統に併入するその制御と併入指令をコンピューターが出し、見事に成功。系統に併入したときの興奮がよみがえり、チームの若い技術者とタービン本体の技術者、何より顧客の課長さんや担当の皆さんと喜び合ったことは、今も鮮明に思い出される。
こうして、無事8月には発電所が全体で営業運転に入り、その完了を見届けて、お役御免となった。帰り、八戸駅から夜行列車の「ゆうづる」に乗る前、夜の10時ごろだったか、お客さんの課長さんが自宅に呼んでくださり、ご家族が皆寝ている中でお酒を一杯飲ませてくださった、そのお酒のおいしかったこと。
そして、苦労をともにした絆は、顧客と受託者の垣根を越えて、心が通じ合った、そのお心遣いが本当にうれしかった。
この技術的に世界初めての、コンピューター直接制御(DDC)の実績は、米国の電気電子学会IEEEに論文発表(注1)し、特許も出し、世界の注目を集めた。
さらに、1971年6月に完成した中部電力渥美火力発電所(500MW)では、超臨界圧のボイラー(三菱重工神戸造船所製)の点火から昇温、タービンへの蒸気導入、発電まで、すべての起動プロセスをコンピューターによるデジタル全自動化をした世界で初めての実績であった。
運転制御のほとんどの工程をコンピューターによる直接制御(DDC)で行い、米国の学会IEEEに発表(注2、注3)したことで、世界の注目を集めた。
TOSBAC‒7000/20型のミニコンで、メインメモリー32Kという今では考えられない小さな容量だが、プラントから温度、圧力、流量、スイッチ他数1000点の膨大な信号を取り込む。水や蒸気は動特性が温度や圧力によって刻々と変わるので、プラントからの信号から、AIのような数式モデルが計算しながら制御して行った。
このような刻々と変化する動特性では、この頃のアナログの制御装置では制御できなかったので、コンピューターによって初めてデジタル全自動化が実現した。