ある日、(寂しいよう、お腹が空いたよう)と、大きな声で鳴いていると、聞きつけた智子ママが部屋に入ってきた。

「しょうがないわねえ。ちゃんと面倒も見られないくせに、飼ったりして。ニャンニャン鳴かれたら、気になって仕方ないじゃないの」と文句を言いながらも、僕のご飯を出してくれると、「にゃん太郎、いい子にしているのよ」と僕の頭を軽く撫でて部屋を出ていった。

智子ママは、ホントは良い人かもしれないと少し安心した。

そんなことが何度か続き、いつの間にか僕の世話は智子ママの役目になっていった。狭い部屋の中に閉じ込められるのは、僕は嫌いなのだ。

芳江さんは僕を見つけると、「ロッシー、元気? いい子にしてた?」と思い出したように言うだけで、(何だい、遊んでよ)と僕が答えても、無視して他の用事に移ってしまうようになった。

忙しいのか、僕に興味がなくなったのかはわからない。

僕は(いいよ、これからは智子ママが僕のママだから)と不貞腐(ふてくさ)れて、本箱の上に飛び乗った。僕は高い所が好きなのだ。

僕の居場所は特に決まっていない。大きくなるにつれて、だんだん智子ママの暗黙の許可が下りて、リビングの出窓や、二階の和室の棚に置かれた箱の中や、押し入れの布団の上など、家中どこでも自由に動けるようになった。

 

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去勢というらしい。人間と暮らすためには、こんな犠牲を払う必要があることを思い知った。

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