【前回記事を読む】家庭教師中、生徒が「私…推薦はわざと落ちます」と言い始めた。理由は「そうすれば、まだ会えるから」──本当は僕も寂しさで胸を締め付けられ…

一万円で君と会いたい

転 断罪

そこには、同じサークルの友人たちが手伝ってくれた『小さな縁日』が広がっていた。射的に輪投げ、そして香ばしいソースの匂いが漂う一台の屋台。

「わあ……!」

波瑠は屋台を見て大はしゃぎし、一目散に射的の方へ駆けていった。

僕は鉄板の前に立った。これまでは金を稼ぐための『手段』でしかなかった料理。けれど今は違う。目の前で笑う彼女のために、僕は初めて能動的にコテを振るった。この時間は、どこか永遠のようにも思えた。

焼き上がったうさぎの形をしたお好み焼きを差し出すと、波瑠は一口食べて、数秒間動かなくなった。

「……これです。これが、食べたかったんです」

じっと皿を見つめる彼女の瞳には、笑いとは正反対の、震えるような感情が宿っていた。

クククと僕は笑うと「似てないですよ」という彼女のツッコミに一同はどっと笑いが起こる。

「……本当にありがとうございました。平さんに会えて、本当によかったです」

夕焼けに染まる広場で、友人たちの笑い声が波瑠の言葉と溶け合う。これこそが、僕の憧れていた景色。この時間が永遠に続けばいいと心から願った。

けれど、そんな願いを置き去りにして、太陽は無情に沈んでいく。友人たちが「片付けは任せろ」と粋に送り出してくれたおかげで、僕たちは二人、長い石段を降りて帰ることになった。