【前回の記事を読む】開発者自身も「ときどき、普通でない創造性が見られた」と語ったプログラム。アルゴリズムに従っているだけなのに、予想できず…

第1章 身近なAIに見る原理

2 ゲームソフト

囲碁とAlphaGo

しかしAlphaGoの進化は止まらず、いくつかの強化バージョンを経た後、2017年末に発表されたAlphaZero(アルファゼロ)は、囲碁で一つ前のバージョンを短時間の学習で上回ったのみならず、チェスや将棋などの他のゲームでも世界最強レベルとなる汎用性を併せ持ちました。

AlphaGoとAlphaZeroとの違いは、後者は人間が打った実際のゲームや戦法についてのデータは一切与えられず、ルールについての情報だけから、自分のコピーと膨大な回数の対局を重ねることで、人間は言うに及ばず、同類のプログラムの一つ前のバージョンをも瞬く間に超えた点にあります。これは単に知能ゲーム用プログラムの躍進をもたらしただけではありませんでした。

それまでは、AIのポテンシャルに対する一般的な疑念から研究開発資金が潤沢に提供されず、AI開発全体が停滞してAIの冬とまで言われた時期が続いていましたが、AlphaGoがその状況を変える突破口を開いたのです。

なかでも中国は、自国の囲碁の世界チャンピオンがAIに敗れたことを契機に、2030年までにAIにおける世界のリーダーになるための国家戦略の策定に乗り出したと言われています。

ところで、AlphaZeroは、実は1秒間に評価できる手の数はチェスの場合で8万と、 Deep Blueの2億に比べると格段に低いものでした。Deep Blueの総探索型に対して、モンテカルロ法に基づくより洗練されたアルゴリズムを採用したものだったからです。

それでも人間に比べればはるかに早い計算力ですが、脳の細胞間の繋がりからヒントを得たニューラルネットワークという数理モデルをベースとして、他のプログラムや自分との対局を何度も繰り返すことで学習する点でも、AIのコンセプトとして人間に一歩近付くものでした。