不器用な生き方
生きることが本当に不器用な兄貴だった。
子供ができてしまったので、当時はまだ珍しかった学生結婚をした。卒業してから就職するが、どれも長続きしなかった。離職の原因は、いつも自分以外の誰かが悪かった。
子宝に恵まれて4人の子供をもうけたが、人の意見は否定し、自分は何でも知っているという態度は、子供が成長するにつれ反発を招き、妻も次第に病気がちになった。
亡くなった両親は、そんな兄貴が不憫だったので、実家に呼び寄せ生活の面倒を見た。逆に、兄貴はずっと自分が親の面倒を見ているのだと周囲には言い張った。
直ぐ下の私は、小さい頃からこの兄貴を慕い、金魚の糞のように後ろを付いて回った。ビー玉、べったん、ザリガニ釣り、遊びの全てをこの兄貴から教わった。私がいじめられて帰ってくると、家を飛び出し仕返しをしてくれた。優しく心強い存在だった。
男兄弟が多かったので、4人でゴルフに行くと、ゴルフ場の人は直ぐに、名前を覚えてくれた。一番末っ子の私が退職したので、これから心置きなく一緒にゴルフができると思った矢先に、兄貴は病魔に襲われた。
ある日、ゴルフのラウンドを終えて風呂に入ると、兄貴の肌の色がどす黒いのである。「兄貴、絶対身体の何処か具合悪いから、病院行きや」と忠告したのだが、やはり人の意見には耳を貸さなかった。苦しくなって病院に行った時には余命4ヵ月だった。
通夜の席では、不器用な生き方しかできなかった兄貴の人生を思い泣きに泣いた。きっと、天国に居る両親が、不憫な兄貴を呼び寄せたに違いない。
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