彼女は、設えられた調度や衣服には目もくれず、夏の間は相変わらず、目星をつけた河原に行き易い身形で行き、砂鉄の採集に勤しんでいた。
勿論、そこには忠賢が必ず同行していて、獣達がこの採集場の河原へ侵入を試みる事は無くなった。
百足が、ひと段落付く頃合いを見計らって、二人で裸になって温泉でお互いを楽しむのが日課になっていた。
忠賢自身、以降は帯刀し弓矢も身に着けてはいても、より動き易く、脱ぎ着が楽な、凡そ、従五位元検非違使の判官とは思えない、身形に成っていた。
二人は、未だ若く、考え方が、柔軟であった。
それは二人が湯船で、乳繰り合う度に体の疲れが解きほぐされると共に、丁子の油が染みた油綿で、お互いの髪を研いだり、結ったりした後、その綿布や彼等の腰布や湯船の布巾に纏わり付く、砂鉄以外の鉱物がその都度、異なる事を認識し出してから、顕著に確信に変わって行った。
『この湯は、それとも川の水は、只の水ではない』
勿論、きらびやかな金の様な物は、付着してはいなかった。
忠賢は、夜這いに行く夜も単に行為をする為に伺うのではなく、砂鉄や鑪、木炭に関する見識を忠賢は、百足から時には、母屋へ揃って伺い、湯船で見つけた砂鉄以外の鉱物や彼等の故郷である備前と、当地の砂鉄の違いに関して、義父であるマムシに講義を受け、時に討議していた。
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