だが、その瞬間だった。
「お兄ちゃん!やめて!」聞き覚えのある声が聞こえた。そして───石碑が光った。
赤と紫の閃光が、碑の神代文字から溢れ出す。クオンの拳が、まるで水中に沈んだかのように鈍く重くなる。
と同時に、エノキドの金髪が逆立ち、風もないのに白ランが風にはためいた。
視界が歪む。クオンには全てがスローモーションに見え、エノキドには全てが早送りのように見えた。
(何が起こっている……!?)
風が渦巻き、砂埃が舞い、枯れ葉が巻き上げられる。赤黒い光の中、二人の間に小さな黒い球体が現れ、それが爆発的に広がった。
次の瞬間、二人の姿は消え、球体も跡形もなく収縮して消え去った。
……静寂。
鳥のさえずりも止み、風も音を潜めていた。
ただ、そこには「石碑」が残っているだけだった。
まるで最初から、何もなかったかのように。そして万葉はそこに立っていた。
「なんで私ここにいるの?」