宇宙は沈黙の淵に眠っているのではない。
宇宙は語る事を欲し
自己言及的な自己認知性をもって自らの最大化を目指す。
しかし、それは生命装置でもなく、無機物でもないただのテロス(目的)。
ホロジカルな構造は知的生命体の決断によって、その多層宇宙を生む。
ひとつの希望が未来を生み
ひとつの決断が宇宙を生む。
ここに見た希望と
これを読む決断は
過去も未来も超えて
非線形的円環の世界の理を知るのであろう。
第1章 プロローグ
どこまでも続く水面。波ひとつ立たず、空の青が鏡のように反射している。見渡す限り、足元の波紋だけが、彼の存在を証明しているようだった。(なんだここは)と心が呟く。神の世界、そんな言葉がふさわしかった。
「なぜ……ここにいるの?」
ふいに、少女の声が上空から響いた。シッチンが見上げると、3メートルほどの高さに一人の少女が浮かんでいた。白く長い髪、透き通るような白いベール。その背中には、まるで白鳥のような羽根。天使という言葉が脳裏をかすめる。
「……ここに“人”がいられるなんて、不思議。ねえ、なんで?」
無邪気な声。だが、その存在は異質だった。
「んん? 聞こえてないのかな……もしもーし」
我に返ったシッチンが答える。
「なぜって……わからない。君は……?」少女の表情が曇る。幼さと無垢さが消え、厳粛な空気が場を支配した。
「ここは、9次元、あなたの世界の裏側……あなたたちの世界の“表”ではない。あなたは、ここにいていい人ではない。長く留まれば、取り返しがつかなくなる」
ゼカリー・シッチンはドイツ軍の秘密作戦「シュテルントーア作戦(星の門作戦)」に参加した。第二次世界大戦の末期、南極のピラミッドを調査するその作戦中に惨劇が起きた。
赤と紫の光が空間を穿ち、重力異常と空間の歪みが身の毛もよだつ方法によって兵士たちの命を奪った。そんな中シッチンは謎の石板に触れ、この場所へ連れてこられたのであった。
9次元? 裏側の世界? シッチンの思考が追いつかない。戸惑うシッチンを見て、少女が手のひらを広げる。すると手のひらにアーモンド形の白い石が現れ、ふわりと浮かび、ゆっくりとシッチンの手元へとやってきた。