保険制度で医療費の負担が少ない我々人間の医療費意識からして、公的保険制度のない動物の医療費のイメージは、初めて動物病院にかかる保護者であるわたしにとって、多額の出費を覚悟したものだった。
しかし、思ったほど、金額がかからないという結果で、以後わたしの中で動物病院のとびらのハードルが取り払われた。
次に飼うことになった猫「友(ユウ)」の場合は、動物病院にかかる時には高額医療費という思い込みやプレッシャーが取り除かれていて、臆することなく動物救急病院にも連れて行けた。しかし今思うと家族なのだから、「動物だから」高額医療費だとかと思ったことが恥ずかしい。
チロは、毎日の生活を堪能していたと思える。それは自分だけ楽しんでいたのではなく、わたしにもやさしい贈り物をくれた。チロには包み込むあたたかい心があり、それはわたしをしばしば癒やしてくれた。
わたしが落ち込んでいた時、気づくと傍らにいつも心配そうに見上げているチロがいた。
わたしはその眼差しにいつも癒やされていた。
その頃には、猫を恐れていたと思われた息子がチロと兄弟のように親しんでいた。しかし出生時からハンディがあったこともあり、チロは二歳の誕生日と思われる日まで生きられなかった。
弱ったチロを病院に連れて行った。洗濯されたぼろ布いっぱいの段ボールの中に彼は何日かいたが、よろよろと外に向かい、ガラス戸の向こうの外の方に歩いた。わたしはもうチロの最期を感じ、彼の前の戸を開けた。チロは解き放たれたように出て行った。
わたしは彼が気になり後を追った。
次回更新は9月10日(木)、19時の予定です。
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