【前回記事を読む】落ちる予定で受けた面接なのに…採用通知が届いてしまった。一旦承諾していいところで退職しよう、と思ったが…

前日

予想通り、数人の学生が普段見慣れない彬の姿を不思議そうに見つめて、ヒソヒソ話をしていた。彬は、そのような学生達の視線を無視するように、ステージに登壇した野間の方に視線を送り続けた。

「ただいまから、離任式を執り行います」

福祉介護科長の須田が、しんみりとした口調で進行を始め、校長の挨拶に移った。

「学生の皆さんには残念なことですが、この三月で、二人の先生が退職することになりました。

それでは、二人の先生方、壇上に登って下さい」

次の瞬間、野間の声が完全に遮られるくらい大きく、悲鳴に近い声が館内に響き渡った。

『教員の評価は、離任式に表れる』学生達の驚きやすすり泣く声がおさまらない中、野間に手招きされた二人の教員が登壇すると、百人を超える学生達の響(どよ)めきが木霊(こだま)するようにホール中に広がり、増幅していくようだった。

今回学校を去る福祉介護科の教員は、関連の高等学校へ異動となり、保育科の教員は他大学への転職のため、退職となったようだ。

彬は、勘を働かせて学校の内情を理解した。つまり、この二人を補充するために自分が今ここにいるのだと。

(果たして、この教員達のように、この学校で評価されるようになるのだろうか?)