【前回の記事を読む】「寝たきりだったら楽なのに」と思ってしまった。まだ自分で歩ける母が勝手に外に出て転倒。通りすがりの人に助けを求め…

〈まさかの転機|認知症と介護〉

11 体も頭も

認知症の病型としてアルツハイマー型(50%)、レビー小体型(20%)、脳血管型(15%)があり、三大認知症と呼ばれています。この3つを合わせると全体の85%をしめます。

一番多いアルツハイマー型は長い年月をかけて脳にタンパク質がたまり、脳の一部が委縮し、物忘れ、徘徊、失禁、性格の変化を引き起こす認知症です。

3番目の脳血管型は脳梗塞や脳出血などの脳血管障害による血管性認知症。

高血圧、糖尿病、不整脈、高脂血症等、生活習慣に起因するものが大半です。

2014年7月、母は初めて認知症専門病院を受診し、診断結果は、2番目に多いレビー小体型認知症でした。

1996年に診断基準が確立した比較的新しい認知症です。

レビー小体は脳だけでなく、全身に張り巡らされた神経にもできます。どの部位に多くできるかによって症状が異なるため、別の病気と思われやすいのですが「レビー小体病」として総称されています。

実際には存在しないものが見える幻視とそれに伴う妄想、転びやすく、歩きにくいパーキンソン症状も特徴です。医師によると母の歩き方に特徴があるということです。

母にも幻視の症状がときどき見受けられました。

ケアマネージャーの定期訪問面接時に「知らない人が土足で入ってきて室内を見ていった」「息子に自宅を売却されてしまう」等を訴えることがありました。

そして気力が落ち込み、悲観的になり、生きる意欲が低下する抑うつ症状も見られ、笑うことも全くなくなったのです。

認知症の薬は当初パッチ(薄いプラスチックを剝がして胸にはるシール状の外用薬)が処方されましたが、肌がかぶれてしまうので途中から内服薬に変更されました。

それでも母は亡くなるまで、暴言や奇声を発する等の認知症の重症化はほとんどなく、日々穏やかに過ごせたのです。

また、これも認知症状の表れなのでしょうか。

母は今まで私のことを名前で呼んでいました。それがなぜか、君付けで呼ぶように変化したのです。

私は自分の息子を「君」「さん」付けで呼ぶ母親がいることを知っています。他人がどう感じるかはわかりませんが、私の一家はそのような上品な家ではありません。

とても違和感を覚えます。私には呼びつけのほうが、母を身近に感じられ、嬉しいのです。

ですから「自分の息子を君付けで呼ぶことはやめろ」と何度も言いましたが、亡くなるまでそれは続きました。

大きな悩みは母が早朝起き出して、自宅内を徘徊・転倒しては体中に痣をつくることです。

まるで自分の1日の日課であるように、何度も、何度もそれを繰り返します。腕の皮膚が薄く、絶えず擦り傷をつくる母の姿は痛々しかったです。