「ストップ詐欺被害」、詐欺にあう方が悪いのか

NHK総合テレビ午後六時台の「首都圏ネットワーク」の中に“ストップ詐欺被害私達は騙されない”というコーナーがあり、ほぼ毎日放送されている。

内容は、「オレオレ詐欺」に代表される特殊詐欺の様々な手口を紹介し、こういった詐欺にかからないよう気を付けましょう、というものだ。 

その趣旨は理解できなくもない。だが、果たしてその実効性はどれほどあるのか。「オレオレ詐欺」にかかる人たちは、電話の詐欺犯の声を息子(あるいは娘、孫など、以下略)と信じるから相手の言いなりになる。そうした場合、詐欺の様々な手口の知識など役に立たないだろう。

大事な息子の危難を救うためなら、何でも(自分の命を投げ出すことすら)やってのけるのが親というものなのだ。電話の声を息子と思い込んだ時点で、勝負は決していると言ってよい。

近頃の特殊詐欺には、「オレオレ詐欺」のように家族を装ったもの以外に、官公庁の人員を装ったものなどもあり、十把(じっぱ)ひとからげにはできないようだ。だが、それら官公庁の人員を装った詐欺の場合も、詐欺犯を本物と思い込んだ時点で勝負が決することに変わりはない。

本物と思い込ませるのが詐欺犯の詐欺犯たるゆえんなのだから「本物と思い込まないように気を付けましょう」と言うのは、単に「詐欺に気を付けましょう」と言うのと大して変わらない。

つまり、特殊詐欺の手口をあれこれ知らしめて「手口を覚えて気を付けましょう」と啓発するだけで、特殊詐欺を防止できるとはとうてい思えないのである。

では、どうすべきか、一つには電話機に付加機能を持たせることである。自治体の中には、ナンバーディスプレイにより見ず知らずの相手の電話にでないようにする。あるいは録音することを伝えつつ実際に録音して相手をあきらめさせる。など迷惑電話防止機能を有する電話機に補助金を出したり、直接そうした電話機を貸し出しているところもあるという。これは有効であろう。

もう一つは、電話番号を取っ替え引っ替えできるプリペイド方式の携帯電話の販売を禁止すること。それに加えて、一人で何台も携帯電話を買い込み、詐欺犯などに転売するのを禁止すること。これも有効であろう。

「手口を覚えて気を付けましょう」より、上記の二つの方が、はるかに実効性があるはずである。本当に特殊詐欺をなくしたいのなら、NHKは「気を付けましょう」と視聴者に呼びかけるにとどまらず、これら実効性のある政策を政府や自治体などに要求して見せねばならない。そして、そういう方向に世論をリードせねばならない。それこそ公共放送の重要な使命なのである。

 

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