転 断罪

10月に入り、街が少しずつ秋の色を帯び始めた頃。家庭教師の最中に波瑠さんが唐突に口を開いた。

「……平さんは、好きな人、いますか?」

急にどうしたのかと尋ねると、学校で「もうすぐクリスマスだし波瑠ちゃんは好きな人はいないのか?」と聞かれたらしい。10月でクリスマスとは気が早いと思ったが、学生にとってクリスマスを恋人と過ごすことは一種のステータスだからと友人から聞いた話を思い出した。

「波瑠さんは……好きな人や気になる人いないの?」

聞き返したが気が気ではないような気持ちに襲われた。波瑠さんは何かを言いたげに俯き、指先をモジモジと動かしていた。

「誰かを好きになるのは悪いことじゃないよ。好きになったら、誰にも止められないものだから」

友人たちの受け売りを借りて、僕は彼女の背中を押した。

次回更新は9月1日(火)、20時の予定です。

 

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