周りには自然があふれ、山や川が彼女たちにとっての天然の遊び場であった。山の一角に網を張って、まわりから棒で草をかきわけ追い込むと野うさぎが網に引っ掛かる。

川ではタモをしかけて足で追うと、ヤマメやイワナがタモの中で飛び跳ねた。遊びはいつも三人一緒だった。

それらを持って帰ると、母のヨシが料理をしてくれてその晩はごちそうとなった。

ヒロ子は尋常小学校を優秀な成績で卒業したが、上の学校へは行かず父母の手伝いで畑仕事をしていた。顔は真っ黒に日焼けし、知性的で涼しげな切れ長の目と真っ白い歯がより目立つようになっていた。

ヨシには「ヒロ子はクロ子ちゅう名前の方が良かったばい」と、よくからかわれたりした。

そんな日々を過ごしていたある日、夜中にふと目が覚めると父の治作(じさく)とヨシはまだ起きていて、隣の囲炉裏のある居間で何やらひそひそと話し込んでいた。

「あしたヒロ子ば引き取りに来らすげな。千円で買い取りたかそうな。どっかでヒロの噂ば聞きつけたらしか」と治作の声。

ヒロ子が人並み外れて器量良しとの噂は山を越えた人吉あたりまで伝わっていたらしい。

「あぁた、ヒロは金のなる木たい。拾うてここまで十三年間育てた甲斐のあったばい。高こう売りつけないかん。こんままじゃうちたちの生活もままならん。儀作もハルも中学どころか小学校も卒業させらるっかどうか、わからんとばい」とヨシが言う。

その時ヒロ子は戸籍上“十四歳”になっていた。

えっ?? ヒロ子は耳を疑った。そしてやっぱりと思った。何となくそう感じてはいたが自分は拾われた身だ。しかもあんなにやさしい母が信じられないようなことを言っている。

同じ人とは思えない。人はこういう二面性を持っているのだろうか、友達もそうだろうか、自分もそういう人間なのだろうか? ヒロ子は不思議さを感じながら聞いていた。

 

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