【前回の記事を読む】夫は出張、息子は校外学習。息子の野球コーチに酒を誘われた私は、家族のいない夜を彼と2人で……

耳を貸す ほのか三十四歳 1

YouTubeでファッションワンポイントアドバイスを発信し始めたのは、はるきを身ごもったのを機に退職してからだ。それまでは家から20分ほど電車に乗った都心のデパートで働いていた。

20~40歳代位までがターゲットの働く女性のためのアパレル。1万円後半から5、6万の比較的、手の出やすい人気ブランドだ。

元々自分のスタイルにある程度の自信はあったが、身長は160ぎりぎり、シャープな美人顔ではない。どちらかというと癒し系の人なつっこい顔は売り子としてははまった。

「これ、合わせ方、難しいかしらぁ」

「結局、同じような色を選んでしまうのよね」

お客様はまるで友達のように気軽に話しかけてくる。ほのかもごりごりに攻めるのではなく、そうですね、わかりますと頷きながらちゃっかり値が張る新商品を手に取るように誘導するのが上手だった。女上司にも50代の役職のおじさんにも受けが良く天職とさえ思った。

メーカー先の智樹と出会ったのは、ほのかが仕事に乗りに乗っている時で、溌溂とした姿を見てひとめぼれだったそう。猛アタックの末、交際わずか半年で結婚。

「早くしないと誰かに取られちゃいそうで焦った」

智樹にいわれた言葉は、後々喧嘩した時や飲み会で朝帰りをされた時に、印籠として大いに役立った。

子どもを授かるのも早かった。ハネムーン先でできたのか、いつできたのかはそういうことが頻繁だったのでよくわからない。色白で程よく肉付きのいいほのかは、堪らなく魅力的だと夫はいう。

マンションの歳の近い同志で親しくなった冴子と美樹は、それぞれ結婚3年目と2年目だが、既に夫はあまり褒めてはくれなくなったと嘆く。特に二人とも女の子ができたせいか、夫たちは愛娘に夢中とか。となると、結婚1年半でもうすぐ8か月の男の子の母親として、妻として、いや女として未だに崇められるのは素敵なことかもしれない。