その九 家族それぞれの出発

① 決心の出来事

大晦日の夜、彼は二年まいりに近くの神社へ行くと言い出しました。「御神酒」と称して一口、口にしました。

年が明けて平成八年元旦です。「お屠蘇」と言いまた一口、二日、三日もお屠蘇を、四日~七日は近くの神社や大師や七福神めぐりなどと大義名分を立てて、お酒を口にしていました。

その日、亡くなった次兄の奥さん(義姉)を年始に招きました。飲むための「口実」を見つけていたのでしょう。

まるで「涸れ井戸に水を一滴一滴注ぎ入れ、段々潤って水が漏れなくなっていくように」です。もういつもと同じでした。

翌日は職場の給料日、私はその支払いの担当者ですから休めません。彼は朝から絡んできます。「酒買って来い!」と怒鳴ります。

お酒を買ってはいけないのです。私の手で与えてはならないのです。

そのことはわかっていても、久しぶりの飲酒で異常に絡んでくるので、切羽詰まり買ってきてしまったのでした。私が帰宅すると、彼はまたも絡み暴れ始めました。

その日は私の誕生日でした。続く二晩もまた、階段下で過ごしました。私は帰れそうもない。

子供たちも「帰るな」と言います。寒い! やっぱり真冬の寒さ辛く堪えます。