写真5 南アルプス仙丈ヶ岳頂上付近:背景は甲斐駒ヶ岳、1970年元旦

1970年元旦、快晴、午前2時に妹と私は大平小屋を出発した。零下20度だ。瞼が、息が凍った。一歩、一歩、まだ見ぬ世界に近づいていった。

そして、仙丈ヶ岳頂上直下、後ろを振り返れば甲斐駒ヶ岳が聳え立っていた。左手には北岳が朝日とともに輝いていた。ここは天国か、果たして地獄か? 人生地図の何丁目何番地にいるのだろうか? 頭のなかは真空状態であった。

そして、確かに2人は1970年1月1日、仙丈ヶ岳、標高3033mの頂に立った。目の前の景色は見たこともないものであった。人生の道を見たような気がした。それはこれから進む己の道を示していた。

翌年の冬にも大平小屋を訪れた。晴天にも恵まれて2年連続元旦に仙丈ヶ岳頂上で初日の出を見ることができたのは生涯忘れることができない青春の思い出である。

写真を拡大 図2 南アルプス概略地図

大学生の時に新設されたばかりの医学部山岳部に入部した。当時の医学部山岳部は、山岳部というよりはワンゲル部のようなもので、主として山歩きをした。

そのなかで、最も印象に残っているのは、大学6年生の夏合宿である。静岡市から南アルプスに入山し、茶臼岳に登頂した。そのあと、聖岳、赤石岳、荒川岳を経て塩見岳まで縦走した。塩見岳で夏合宿は解散し、各々が自由に行動した。


*北沢峠直下、標高約2000mにある

 

👉『胡蝶夢号の旅』連載記事一覧はこちら

【イチオシ記事】あの時と同じ露天風呂…でもあの時よりもずっと深く、愛しあった。「もう1回だけ」と囁かれ、湯けむりのなか重なりあって…

【注目記事】「三人でシよう」彼が同僚を連れてきて言った。私はただの遊びの女で、愛し合っていると思っていたのは私の錯覚だった…

 

ゴールドライフオンラインは、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp