わたしが机に座った時、その机の引き出しの一番下とその上あたりの引き出しに仔猫たちはいた。そこは彼らの遊び場だった。

仔猫たちは、結構な数いたような気がする。 当時のわたしには特に可愛がったとか、お気に入りなどの猫はいなかった。通常、家の中ばかりで過ごしていたわたしの日常だったので、外に繋がれていた犬はその頃のわたしにとっては、目の届きにくい遠い存在だった。それに関心も少なかったわたしは、猫よりもなお、犬には心が向かなかった。

そのように彼らに関心を持たなかったわたしだから、彼らが我が家、また周辺にいつ頃からいつ頃までいたのかとかも、わからない。

後年、勤め始めた頃、多分その日、わたしは微熱があり、職場を休んで布団の中にいた。夜、庭の犬小屋に繋がれていた犬(名前も不明)が眉間を斧で割られた時の「悲鳴」が生々しく今、蘇る。それは今思うと凄い事件があったのだろうと推察出来るが、わたしには大変な出来事としての記憶になっていないのだ。

過去に通り過ぎていった出来事の一件とだけで、淡々とした「過去」となっている。何しろその頃、わたしはそれどころではない重いいろいろな問題事(ごと)を抱えていて、さまざまありすぎてか、家の犬の事件を追う余裕もなく、記憶からも消えてしまっていたのかと思われる。

わたしが生まれる前か後かは定かではないが、我が家に「まる」という犬がいた。彼はネズミを捕るのに長けていたらしい。記憶のおぼろなわたしでも今も彼の名前を覚えているのは、それだけ我が家の人たちがまるとそのエピソードをある頻度で噂していたからだと思う。まるは我が家の人たちの印象に残る犬だったのだろう。

まるは我が家では英雄だった、とわたしには思われる。当時犬も猫もネズミを駆除する為の家畜として飼われていた。まるの仕事もネズミ捕りだった。

まるはネズミを捕る技に優れていた。多分他の犬、猫より多くを捕えたのだろう。

仕事は出来たのだが、運悪く捕えたネズミがすでに猫いらずという毒を食べていた。それでネズミ捕り上手だったまるは死んだ。

 

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