【前回記事を読む】空港に近づく地下鉄の窓に、急上昇するジャンボ機が映った…あれは私たちが乗るはずだった成田行きで…

進化続く旅路

日本に戻るや動き始める。もう止まっているわけにはいかなかった。真剣に食生活の充実に取り組むことになる。日本でクッカーを買い、保存食や調味料を揃え、好みなものをトランクに入れ、また海外に戻る。生鮮は現地調達をすることで食生活の質は大きく向上していった。クッカーでぶ厚い肉迄ジュージューと焼く、ここ迄の進化はこの倶楽部の女くらいであろう。

東京で食べる当たり前の食事が、不便な旅先でこうして味わえることの格別さ。芽キャベツ、マッシュルーム、ルッコラ等日本において高嶺の花の野菜たちをいっぱいに食べられる幸せ。旨しい記憶。どんなパブよりも格安でぜいたくな夕食に二人は癒やされた。

其の後も夫は自分の仕事の段取りが付けば不満を漏らすことも無く同行してくれるようになっていた。食生活のクオリティアップが、あれこれと解決に大きく貢献してくれていた。二人は笑顔だった。

私は次々に発生する難問を叩き潰していく。いわゆるもぐらたたきを懸命にやりながら平穏に更に上昇気流を見誤らないように上手に乗っていく天才なのかも知れない。しぶとく戦う負けない女は、㐂びを見付け出してしまったこの世界に、一層のみがきをかけていく。 

ヨーロッパに偏りがちな日々にも見えるけれども、ニューヨークへは、この仕事に入る以前から大好きで二人で訪れていた。しかしここに至っては骨董の情報に基づいて、以前の遊び感覚とは異なり、ギラギラとコレクターの眼差しでマンハッタンを歩く迄に進化を遂げていた。

三月と十一月に開催されるハドソンリバーでのピアショー。ドイツの教会で佇んでいた忘れられない身の丈一メートルにも及ぶ大きなマリア像と感動の出会いをする。

木のマリア像

当時は会場から投宿ホテル迄シャトルバスの運行があった。この思い入れ深いマリアは俱楽部のクリスマスカードのモデルとなり、ニューヨークのディーラーから絶賛を浴びる。又マンハッタン55st. のアートセンターには強く引きつけられていた。