やがて秋が訪れ、秋祭りの季節になった。学校から400メートルほど先の公民館がにわかに活気付き始めた。秋祭りの準備が始まり、高さが3メートルほどの櫓が組まれ、その周りが踊り場になっていた。
村には、人手がなく、祭りに費やす余力はなかったため、町の秋祭りは、村の人たちにとっても、1年の締めくくりであり、守られてきた伝統を楽しむ大切な行事となっていた。幸三は学校の帰りに、公民館の前を通るたびに、組まれた櫓を見て、「一度は行ってみたい」と胸を弾ませていた。
中学1年生の1年間は、慌ただしさと緊張感に彩られて、あっという間に過ぎ去った。
2年生に進級したが、学校の方針でクラス替えはなく、担任も変わらず1年生がそのまま、2年生に進級した。
2年生になると、早くも高校進学を視野に入れた、県内統一模擬試験が行われ、クラスの話題はもっぱら「どこの高校へ行くのか?」で持ちきりだった。
幸三たちはベビーブームの世代にあたり、競争は激烈を極めていた。
有名学校へ進学し、有名企業に就職して、他人より良い生活を送る。そんな目的のために、熾烈な受験競争が、既に始まっていた。
生徒たちの進路には、高等学校、各種学校、専門学校への進学、あるいは就職という選択肢があり、選択は家庭の経済事情が大きく影響していた。生徒数が多いこの世代では、高校進学率は60〜70%と高く、幸三の通う中学校からおよそ80 メートルほど離れた公立高等学校は、全国の国立大学に多くの合格者を輩出する名門進学校として知られていた。
しかし幸三にとっては、高校進学はまだ、他人事だった。授業とクラブ活動、さらに村の杏畑の手入れを手伝う日々で忙しく、受験勉強に思いを巡らせる余裕はなく、受験勉強は、まだ、遠い先の話に感じられた。
幸三とともに学級委員長を務める美智子は、1年生の頃から、授業を休むことが多く、友だちのノートを借りては何度も復習を重ねることで2年生に進級できた。しかし今年の夏休みには、心臓の病気の精密検査と治療を受けるため、大学病院への入院が決まっていた。
聡明で機転が利き、町育ちらしい上品な言葉遣いで優しく接するため、クラスメートから「みっちゃん」と呼ばれ親しまれていた。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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