土橋の覚悟とは裏腹に、田中の表情がさらに曇る。
「それが……、マスコミはどこもダメだった」
田中は取材した内容を、テレビ局や新聞社、出版社に持ち込んだが、どこもセリナオの名を告げると、接触を拒んだ。
「圧力か。抜かりないな。……俺が国会で追及し、マスコミと検察を動かすしかない。……奴らが俺達の動きを全て把握する前に、一気に畳み掛ける」
土橋は、田中が調べた数々の証拠と、自身がまとめた被害者の声を、国会で公表し、政権与党と厚労省を徹底的に追及した。国会内は騒然となり、野党からは怒号の声が上がり、その様子がSNSで話題となった。しかし、質疑に応じていた厚労省の大臣は、不自然なほど落ち着き払っていた。
データの改ざんに職員が関わった事実はないこと。被害者とセリナオの因果関係が証明されていないこと。情報提供者や告発者に関しては、匿名のため、信憑性に欠けること。従って、現在の状況では、セリナオの回収や薬害救済を行う予定はないこと。それらの文言を事前に用意していたかのように、つらつらと、表情一つ変えずに述べ、土橋の要求を頑なに認めなかった。
それでも、土橋は必死に食い下がり、一刻も早く再調査を行い、問題が見つかれば即時に回収を行うよう執拗に打診を行った結果、再調査だけは、渋々承認された。マスコミはその様子を取り上げず、ネット上での反響は一時的で、すぐに下火となった。
しかし、土橋の必死の追及が、医師会と看護師会を動かし、セリナオの強制回収を即時実施するべきだという論調に発展した。そうして、医療従事者への説明責任が生じた、厚労省とレイス製薬は、緊急の記者会見を開くこととなった。その間にセリナオの承認に関わった厚労省の審査官の一人が行方不明となっていたが、マスコミは沈黙を貫いた。
【イチオシ記事】畳の上で変なことをしてくる兄…「息が臭い」と思ってると母がやって来た。…すると兄は慌てて手を離し、部屋から出て行った。
【注目記事】抱き上げられて寝室へ…彼は「泣かないで」と言いながらも、激しく求めてきて…指先で触れられるたび涙が止まらない。
ゴールドライフオンラインは、表現者を応援するウェブメディアです。
生身の人間が紡ぐリアルな言葉だからこそ、読者の心を揺さぶる力があると確信しています。
あなたも、"表現者"になってみませんか?
ゴールドライフオンライン編集部:glo_henshu@gentosha.co.jp