03 港区ギャラ飲みの世界

かつて渋谷の街角で、まだ制服姿だったころ、麻里奈はタピオカミルクティーを啜りながらプリクラを撮っていた。

安っぽいキラキラしたフレームで飾られたプリクラ、雑踏するセンター街、何気なく手にしていた甘い飲み物。それらは「青春」の断片として彼女の記憶に残っているが、今はもう遠い幻だ。

二〇一九年の西麻布、麻里奈は同じ人物でありながら、まるで別種の生き物になっていた。港区に舞台を移し、ここで生き残るための戦略を身につけた彼女は、かつての「ただの女子高生」には戻れない。その理由を細かく語る必要もない。

事実として、麻里奈は今、「若さがカネに変わる」法則が当たり前に流通する夜の世界にいる。それだけで十分だった。

西麻布交差点から南青山方面へ歩いて五分。高木町の会員制バー「エンヴィー」のドアを押す。重厚な木製の扉が静かに開く。控えめなスタッフが視線で客を選ぶ。この瞬間、私は商品の一つであると同時に、交渉者でもある。

暗い照明に満たされた高級感溢れる内装。無数のシャンデリアが静かに輝き、ラグジュアリーな革張りのソファが並び、VIP専用の個室がいくつも配置されている。どこもかしこも、カネの匂いが染み付いている。

アルマン・ドのラベルが金色の光を放つ。この光には魔力がある。若さを計量し、換金し、再分配する装置のように。

かつてタピオカを啜っていた少女は、今はベネトンのワンピースにルブタンのヒール、ディオールのリップで整えた唇を持つ女性へと変貌している。

ほんのわずかな整形の痕跡が、ここで生きるための意志を示しているようだった。完璧である必要はない。修正可能であり続けること、常に向上すること、それがこの街での生存戦略だ。

男たちの視線が、脚、髪、顔を舐めるように通り過ぎる。この視線は武器でもあり、毒でもある。彼らは経済力を誇示し、女たちは若さと美貌で応じる。支配する者と支配される者。その境界線は曖昧だ。