ラジエルとガブリエルは意識の戻らぬリリスを抱えて階段を駆け下り、ヤハウェの部屋に着くと扉を叩いた。扉が少しだけ開くと、ヤハウェがおそるおそる顔を覗かせた。ガブリエルは力任せに扉を開くと、部屋に転がり込んだ。
「ミカエル! ミカエルはどこだ?」
「何事ですか?」
「ヤハウェ様、この宮殿から一刻も早く逃げなければなりません」
ガブリエルはリリスをベッドに寝かせ、はやる心を抑えて言った。
「時間がない。すぐにここから出るぞ! ソフィアから逃げなければ」
ラジエルが部屋の片隅で震えているアダムとイヴを優しくなだめた。
ヤハウェはベッドに横たわらせたリリスの容体を診て、顔を曇らせた。
「リリスのためにもエデンの丘にまいりましょう。丘の村で手当てをすれば助かります。急ぎましょう! ミカエルもきっと丘にいるはずです」 ヤハウェはリリスを抱えて部屋から出た。ガブリエルはイヴを、ラジエルはアダムを抱えてヤハウェに続いた。アダムとイヴが声をあげないように軽く口を塞ぎ、そっと宮殿を抜け出し丘に飛び立った。
エデンの丘ではミカエルが生命の樹の下で瞑想をしていた。そこにガブリエルが血相を変えて飛んできた。ミカエルはただならぬものを感じた。
「ミカエル、大変だ! すべてはソフィアの謀反だ。この地球を神から奪い、我が物にするための罠だったのだ!」
ミカエルの表情が険しくなった。
「やはりそうであったか。何もかもが理不尽だったが、ようやく納得できた」
少し遅れてラジエルもミカエルのもとにやってきた。
「一刻も早くソフィアの謀反を止めさせないと」
「ラジエル、頼みがある。この地球に遣わされた天使と女神の中でソフィアに加担していない者を集めてくれないか」
ミカエルはそう言ってラジエルに刻印の入った小刀を手渡した。