相手は次々と血煙を上げるのではなく、黒い霧のように崩れて消えた。

「ささ、こちらへ」

その時になってひらひらした着物を着た娘は自分の手を取り走った。

その手がやけにヌルヌルするのが気になったが、とにかく言う通りにするしかない。

もう一人は少年の手を取り反対側に走って行く。

「先生大丈夫だよ。その人は味方だから」

と叫んで闇に消えて行った。

何処をどう走ったのか気がつくと見慣れた自分の部屋にいた。

改めて女を見た。

「私は中蘭(ちゅうらん)と申します」

「私は、邪魔にならないように部屋におりますゆえどうぞお気になさらず」

と言って部屋の隅にうずくまったまま動かなくなった。

幾重にも重なったちりめんの着物、黒目がちな目、あっと思った。

ランチュウ、あの大きな金魚にそっくりではないか? と思ったがその晩は疲れすぎて何も考えられずに眠ってしまった。

この世は一つの重なりではなくアリスのうさぎ穴からバミューダトライアングルまで人間が踏み込めない場所への入り口がたくさんある。
その中に安倍晴明の屋敷がまだあるが、昔の形態とははるかに違っている。

日本の妖怪たちが開発やLEDや外国の強い神に追われ逃げ込んできている。

昔退治するはずの妖怪たちに泣いてすがられ、今では妖怪たちの駆け込み寺になってしまい、強引に住み着いた妖怪たちは、勝手に改装を繰り返し、怪しげな商売をしながら晴明の式神たちと共同生活をしている。

 

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