携帯を見たが画面は真っ黒で圏外とすら出ていない。スイッチを押しても何の反応もない。

その時どんと壁のようなものにぶつかった。

濃厚な霧は視界を遮って正体不明の壁を覆っている。

そのうちに、ガシャガシャという音が聞こえ、信じられないものが見えた。

それは時代劇に出てくるような鎧を着た武者だった。

自分の袖をつかんでいる少年の手ががくがくと震えている。

その時甲高い声が聞こえた。

「その子に手を出すことは許しません」

なぎなたをかまえた二人の女が、ひらひらとした着物を着て下りてきた。

武者のような影は一瞬ひるんだが、げらげらと笑い出した。

「おまえたちに何ができる。今退けば助けてやる」

その時に何かがざっと落下した。

赤い着物に短めの茶色の袴を履いた小柄な若い女だった。

黒く長い髪、足元は何もかも踏みつぶせそうなごつごつした編み上げの頑丈そうなブーツを履いている。

「結界を破ってくれて助かった」

そう言って影のほうを向きなおり、腰を落として持っていた着物と同じ色の赤い刀の鯉口を切り、体に引き付けて下段に構え相手をにらんだ。

その気迫に相手はひるんだように見える。

普段の小娘のオーラを脱ぎ捨てた朱雀の目は、猛禽類の目に変わり、上段で打ち掛かってきた相手の刀を真っ向から受け、跳ね返した。

刀は火花を発して天高く踊り、その間に一刀で相手のみぞおちまで切り下げた。

そのまま素早く跳躍して踏み込み、すかさず二人目の胴を払った。