コメと別世界の飯

蒸すヒエ、食べやすさより調製のしやすさ

ヒエは炊いてすぐはいいが、時間がたつと硬くなる。「小さい頃はヒエ一〇〇%の『へぇめし』だった。ぽろぽろと箸からこぼれてしまうのでお椀をかかえて食べた。その癖がコメを食べられるようになっても抜けなかったと姉が言っていた」。岩手県の山間部に暮らす女性はそんな風に話した。

粘りがなく箸にひっかからないため、ついお椀をかかえこむように流し込みながら食べたことが恥ずかしかったというのだ。

普段の食事に食べられたのがヒエご飯だった。コメは、主食向きの一般的なウルチ種のほかにおこわを炊いたり餅を搗いたりする糯(モチ)種があるが、ヒエはウルチしかない。在来の品種にモチのヒエはない。

岩手県北部の軽米(かるまい)町で雑穀栽培・加工流通を手がける尾田川勝雄さん(昭和28年生まれ)が指摘する。

「もちもちしたものばかり食べると飽きるけれど、ウルチのヒエはもたれない。普段の食事にぴったり。モチ(のコメ)はもたれるので主食には向かない。おやつ向き」

ヒエにウルチしかないのはご飯としての主食に向く何よりの証だ。いつもそばにある食べ物だった。

同じ雑穀でもアワやイナキビなどはモチがあり粘りがある。コメがとれない地方では正月などハレの時にアワを餅にした。

コメと同じように蒸かして搗いて餅にできるため珍重され、ヒエよりも位が高い食べ物とされた。

蒸したヒエは見栄えがよくない

ヒエがおいしいものではなかった理由にその調製方法がある。脱穀したヒエの籾殻をむく(籾すり)前にいったん蒸した。

蒸すと実と籾殻の間にすき間が生まれていくらか籾殻をはずしやすくなる利点があるが、何より蒸すとかさが増えて喜ばれるためだった。

蒸さずにそのまま籾殻をむくやり方もあったが、「蒸したヒエの方が炊いた時にふくらんだ。実がふくらんでみえる」と小野寺ツキヨさんは話した。蒸すことは大切な主食だったヒエの位置づけを端的に示す。

 

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