【前回の記事を読む】ケンカ自慢の不良連中が金網に集められた…始まったのは、ルールなしの“デスマッチ”。裏で操る組織の正体は……
第一章 国家的プロジェクト
二 県警捜査第四課管理官
実際のところ、補佐がしっかりしていれば出る幕はなく、いるだけの存在と揶揄される場合もあるが、東郷管理官の場合、「いるだけ管理官」という者はいない。
帳場に入ってくるだけで周囲を威圧するオーラを放ち、帳場には一時間も座っておらず、余計な指示や質問はしない。
現場捜査員の動きは捜査日誌を見ればすべて分かるし、捜査第四課長にも直接報告する立場にもない。
報告は補佐の仕事であり管理官がでしゃばる必要もないし、まず補佐の報告を管理官が帳場で受けてから補佐が課長に報告するのである。
管理官を飛び越えて課長に報告するのは組織的にはアウトである。管理官にとってこの飛び越えをやられてしまうと存在を否定されることになるのである。
しかし現実的には「微妙な立場」であることには間違いない。
六個班も持っているので中には突っ走る補佐もいるし、課長と話を完成させてから管理官に事後承諾を求めてくる補佐もいる。
東郷は、この点十分わきまえており、飛び越えられても飄々として、逆に「報告ありがとう」と謝意を伝える度量も持ち合わせていた。これはなかなかできるものではない。
男と男の世界であり階級社会でもある。道を外せばクンロクを入れる胆力を持ち、外形的にもその胆力が伝わってくるのが分かるのに本人は黙っているのである。