クラクラッと目眩がして思わず俯いた恭平は、立て続けに二発三発と顔や脇腹に拳を入れられた。口の中が切れて、血の匂いが鼻をつく。
その血の匂いが、恭平の中に眠っていた凶暴な魂に火をつけた。
「おどりゃ!」
大声を張り上げ、身体を一回転させると背後から腰を掴んでいる男の顔面に膝蹴りを入れる。男は大仰に腰を折り、顔を手で覆った。恭平は容赦なくその手の上から蹴り上げた。男は顔を覆って、仰向けに倒れた。倒れた男の顔と言わず腹と言わず、恭平は踏みつけ蹴り上げた。他の三人がその激しさに竦んだ隙に、恭平は三人に向かい、広島弁丸出しの啖呵を切った。
「よっしゃあ。儂は死ぬ気でやったる。我らもやるんなら死ぬ気で来い」
素面(しらふ)では大人しいサラリーマンなんだろう。倒れた仲間を引き起こすと、反撃の気配すら見せず黙って歩き出した。
四人の影が街灯の明かりから消えた途端に、恭平は立っているのが辛くなり、膝に手を当ててしゃがみ込み、大きく肩で息をした。目の辺りが傷ついているようで、視界が狭く感じられる。ふらつく恭平を淳子が抱き抱える。
情けないことに淳子を送ってきた恭平が、逆に送られる羽目になった。
試し読み連載は今回で最終回です。ご愛読ありがとうございました。
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