【前回の記事を読む】色気はなくても、女の身。野宿はできない…足を引きずって泣きながら歩きだすと、「さっき歩いたよな…ここ」
第三章 伊予 菩薩の道場 山ばかり、でも人が優しい
27日目 2024年10月15日(火)
2kmほど戻ると、反対車線を走ってきた軽トラがスーッと止まり、麦わらを被ったおっちゃんが「ねーちゃん、なかなかいい歩きっぷりじゃけんど、逆打ちか?」と聞いてきた。〈そりゃ、そう見えるよね、戻ってるんだから〉不貞腐れたことを思った。
「違います」と答えると、「ほえ? じゃ、なんで逆向いて歩いとる??」といろいろ心配して聞いてくれるおっちゃんに聞かれるまま答えていたら、「宿かぇ……そりゃ気の毒や、いっぺん歩いたとこなら、車で戻ってもええがじゃろ? おっちゃんが送っちゃるけん、乗ってき!」と私のリュックを剥ぎ取って、軽トラの荷台に積んで、私を助手席に乗せてくれた。
私はおっちゃんのことを、《麦わら帽子を被った弘法大師》だと思った。
おっちゃんは「ねーちゃん、いい歩きっぷりだから、余計なお世話かもしれんけど、明日、ここまで、また歩いたら時間ももったいないき、朝はバスで、ここまできて、また続きを歩いたらええき」と教えてくれた。
「バス通ってるんですか?」と聞くと「朝と夜に2本ずつぐらいやけんど」と言う。おっちゃんの親切に、半泣きでお礼を言う私に、「そんな感謝せんでいいき~、そうや! 明日43番明石寺さんやろ? ここからの道順教えちゃるき、そしたら、バス降りてから、迷わんでも行けるやろ!」と軽トラで私が降りるであろうバス停から、その道順を追ってくれた。
おじさんは畑仕事に向かうところではなかったのかと聞くと、「ほーやけど、気にせんで、どうせすることもないでやっとるだけや~」とガハガハと笑う。そして、道すがら、山間に豊後水道が見えるポイントに立ち寄って、見せてくれた。ひょんなことから、地元のおっちゃんとドライブすることになったが、その時間はとても素敵な時間だった。
ドライブ中、山道の途中でキョロキョロしながら歩いてるバックパッカーがいる。「あん人……笠被っとらんけど、逆打ちん人ちゃうか?」と軽トラを止めさっさと車を降りていく。「あんた、逆打ちしなさるか? 道まちごうとるよ~」と教えてあげている。とことん親切だ。ペコリと頭を下げて、逆打ちのバックパッカーは嬉しそうに歩いていった。
車に戻ったおっちゃんに「おじさん、さすがに道に詳しいんですね!」と言うと、「おっちゃん、定年するまで、この辺の郵便配達しよったけ、道だけは人よりようわかるんよ」とニコニコしている。
そうこうしているうちに、明石寺の参道入口だという場所に到着。何かの建造物の裏手の薮の割れ目を指差して「わかりづらいけんど、ここやきね」と笑う。1人で歩いていたら、まず確実に迷うか間違うか見落とすかであろう参道の入口だった。教えてもらって良かったと心の底から感謝した。