【前回記事を読む】相続放棄をしなければ借金も相続――故人の死後3か月以内に調べるべきこととは

第1章 遺産分割(石塚大介弁護士)

4 具体的相続分

(2) 法定相続人の法定相続分

③特別受益者の範囲

民法第903条1項は、「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、……相続財産とみなし」と規定されています。

被相続人から遺贈や婚姻のための贈与等として多額の生前贈与を受けた相続人がいる場合、その受けた利益のことを特別受益といいます。

このような特別受益は、遺産の前渡し分と評価できます。特別受益の制度は、相続人間の公平のため、特別受益分を遺産に加えて具体的相続分を定めるというものです。特別受益者の範囲は、相続人に限られます。相続人以外に遺贈や贈与がなされてもそれは相続とは関係ありません。

特別受益となる贈与の対象には限定があり、「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本」に限られます。特別受益となる婚姻のための資金としては、支度金や持参金などがあります。支度金や持参金が多額の場合は、特別受益と考えられます。

他方、結納金は、結婚相手への贈与ですから一般には特別受益にあたらず、挙式費用も親や親族も参加する費用で、当該相続人に対する遺産の前渡し分とは評価できないため特別受益にはあたりません。

「その他の生計の資本としての贈与」とは、居住用の不動産の贈与やその取得のための資金の贈与、お店の開業資金の贈与等、生計の基礎として役立つような財産上の給付をいいます。学費等は、一般には親の扶養義務の範囲といえますから、特別に高額でなければ、特別受益にはあたりません。