家に帰る決断
脳梗塞の治療でお世話になった医療センターの医療相談室に行った。相談できるところはそこしか思いつかなかった。以前に母が脳梗塞で入院していたときに、ベルを押せば看護師が用便の手伝いをしてくれた市立総合病院に転院できるかの相談に行ったのだ。結果は用便の介助の有無という理由では病院の変更はできない、ということだった。
しかし、相談員は言う。
「手術がうまくいったという意味では『緊急処置』は終わっているのでしょう? 後は感染防止のための点滴と手術後の傷に対するガーゼ交換だけですから、近所のかかりつけの医者か看護師さんに来てもらえば自宅でできますよ。入院している必要はありません」と。
ハッとした。目からうろこの思いだった。道は切り開かれたのだ、熱い思いが込み上げてきた。相談員には感謝してもし切れないという思いを胸に、ただちに母のかかりつけの医師に相談すると、
「私は内科ですから守備範囲を越えています。手術を担当された外科の先生の指示のもとで処置を行う、という一文を書いてもらえばできますよ」と。
病院に戻り執刀医に退院希望を申し入れた。執刀医は、
「ベッドから転落した後のレントゲン写真を見ても異常は見られない。手術はうまくいってます」
「術後三日での退院は異例ですが、アメリカなどではそれが普通です。お母さんの場合は自宅での在宅医療の方が回復が早いでしょう」
「もちろん、感染症発生の場合の対処の遅れというリスクはありますがそれでもいいんですか?」
「いいですよ」
「内科の先生への申し入れ、いいですよ。一文を書きましょう」
その日のうちに退院した。帰宅すると幻覚が消え、食欲も戻り、別人のように変わった。かかりつけ医が出勤前に点滴とガーゼ交換、夜に看護師さんがガーゼ交換。一週間で完了。