「急性心筋梗塞です。詰まった血管を広げて、ステントという器具を入れました。幸い、発見が早かったので、一命は、取り留めました」

よし子は、へなへなと、その場に座り込んだ。

「ただ――あと少し処置が遅ければ、危ないところでした。これからは、生活を根本から変えていく必要があります。無理は、禁物です」

(生活を、根本から。――それはつまり、これからずっと、この恐怖と一緒に生きていく、ということなのね)

集中治療室のベッドで、雅彦は静かに眠っていた。たくさんの管につながれた姿に、よし子の胸が、また締めつけられた。

しばらくして、雅彦がうっすらと目を開けた。よし子に気づくと、青白い顔で、弱々しく微笑んだ。

「……心配、かけたな」

「馬鹿。馬鹿、雅彦さんの馬鹿」

ほかに、言葉が見つからなかった。怒っているのか、安心しているのか、自分でも分からない。ただ、涙だけが、止まらなかった。

よし子は、その手を握りしめた。温もりが、少しずつ戻ってきている。その温もりが、ありがたくて、また涙があふれた。

助かった。よかった。本当に、よかった。それなのに、よし子の胸の奥には、黒い影のような恐怖が、ぽつんと居座っていた。

(この人を、いつかまた失うかもしれない――)

その恐怖は、雅彦が回復した後も、消えてはくれなかった。むしろ、日ごとに、大きくなっていった。

 

 

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