【前回の記事を読む】ジムに見学に来た女子高生の目当ては、あるプロボクサー。1分間のインターバルでみんなが休憩するなか、彼だけが…

第一章

一人のファンの少女

『初めて手紙を書きます。私は新山選手が全日本新人王になったときからのファンです。新山選手の綺麗なボクシングに憧れて、ファンになりました。前回の防衛戦の前に友達と練習を見学に行かせていただきました。とても素敵で格好よかったです』

「新山。ファンレターがきてるぞ」

その日、試合から数日が過ぎ、練習再開のためにジムに顔を出した。

体の調子も戻りつつあった。試合当日の夜は、打たれたダメージが酷く眠れない。

試合中はアドレナリンがマックスに出ていて、痛みを感じ難いのだがクリーンヒットをくらったときには花火が散る。きついのは、その夜と翌日。

顔が腫れ上がり発熱感とともに体中が痛んで、フラフラ感と一緒に打たれたダメージを余計強く感じる。

一週間後ぐらいから顔の腫れや青アザ、体のダメージも時間とともに消えていく。

通常、ジムワークは十七R(ラウンド)するが、今日は練習始めなので半分のラウンドにしておこう。

いつもより早い時間にジムのドアを開けると、寺門会長に声をかけられた。

“ファンレター?”