喫茶店”ぼん”のドアを開ける。“ぼん”は、都営地下鉄、東大島駅に下りていく途中の半地下に立地していた。

俺は、ここでよくジムのスタッフと打ち合わせをしたり、雑誌の取材を受けたりする。

中は照明を落としてあり少し薄暗い。四人掛けのテーブルに彼女たちはいた。

「ごめん。待たせたね」

「いいえ、いいえ。とんでもありません」

目をクルクルさせて一人の女の子が緊張しながら返してきた。

声が上ずっているので、彼女の緊張がすぐにわかった。

俺は彼女たちの真向いに腰掛け、コーヒーを注文した。

「何でもいいから頼んで」

「は、はい。じゃあ、オレンジジュースをお願いします」

「二人とも?」

「はい」

“オレンジジュース? やっぱり子供だ”

もう一人の女の子は、ニコニコしている。

「お疲れのところ、申し訳ありません」

「大丈夫だよ」

気を軽くしてやろうと笑いながら答える。

すると「私、新山さんにファンレターを書きました。読んでもらえましたか?」

そう言ってきた彼女は、二重の大きな目と、スッと鼻スジの通った口元の愛らしい人形のような顔立ちをしていた。

頬が薄っすらピンク色をしていて思わず見つめ直してしまう。綺麗な黒髪が肩にかかり、その髪の先は軽くウェーブしていた。

男だったら誰しも振り返るだろう。俺の周りにいる女は、みんな濃い化粧をしている。そういう女たちだった。

化粧をしていない彼女の綺麗な顔立ちを見つめていると「ふーっ」と、思わずため息が出た。

それが彼女に初めて会った瞬間だった。まだ高校二年の本当に子供だった。

しかし、なぜかわからないが俺はその夜眠れなかった。

 

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