【前回の記事を読む】ボクシング知識皆無の女子高生が、1つの試合をきっかけに虜に! 大好きな選手のトレーニングを見に行く計画を立てるが…
第一章
新山好次(こうじ)選手
新山選手は、一九七四年十月、日本バンタム級王座決定戦で、千葉隆俊(佐々木ジム)に判定で勝利し、チャンピオンになっていた。リングネームもこの試合より新山裕から新山好次に変わっている。
この年の四月、ガッツ石松がロドルフォ・ゴンザレスからWBC世界ライト級タイトルマッチで八R(ラウンド)KO勝利でタイトルを奪収。
「キンシャサの奇跡」と呼ばれるWBC・WBA世界ヘビー級タイトルマッチ、三十二歳のモハメッド・アリが無敗のジョージ・フォアマンに逆転KO勝ちを収め世界中を沸かせたのもこの年だ。
新山選手が日本王者になった同じ一九七四年の十月、同門の堀内章二選手がWBC世界フライ級チャンピオンになっていた。
その他にも柴田国明選手や花形進選手などの日本選手の活躍が続き私たちボクシングファンを熱くさせていた。
新山好次選手は日本タイトルを獲った後、ノンタイトル戦で古橋幸一に勝利。その後の日本タイトルマッチで、遠藤亨を相手に判定勝利で王座初防衛。ジャッカル内田、原口強戦の後、WBC世界バンタム級タイトルマッチへと道を進めて行く。
私は、テレビ放送で新山選手を追いかけていたが、
“実際に本人に会ってみたい!”
と、いう衝動を抑えきれないでいた。
そこで、サワと一緒に東大島にある寺門ボクシングジムに練習を見学に行くことにした。
「練習って、毎日してるのかな? せっかく行って新山さんいなかったら、ガッカリだから」サワが、聞いてきた。
「ジムに電話して確認してみるよ。ボクサーって、プロといってもボクシングだけでは生活できなくて、ほとんどの人が昼間仕事をしているらしいから。雑誌の記事に載ってた」
「へーっ。大変なんだ」
「だからトレーニングも、仕事が終わってからじゃないかな?」
「堀内さんも練習しているか聞いて」
「了解」
私は大きく頷いた。いよいよ実行のときが近づいてきた。
“新山選手に会える!!”
私とサワは、六時限目の音楽の授業をサボり学校を抜け出して、寺門ボクシングジムへの練習見学を実行した。小田原駅から小田急線で新宿まで一時間半。
そこから都営地下鉄線で東大島まで三十分。ジムは駅のすぐ近くにあった。五時限目が終わってから学校を飛び出したのに、着いた頃には薄暗くなっていた。私もサワも緊張していた。
ボクシングの練習を見るなんて初めてで、それもプロボクサーで世界チャンピオンや、日本チャンピオンだ。