【前回の記事を読む】ジムから禁じられていた、女性との交際。しかし気持ちを抑えられず、試合会場に残っていた女子高生を抱きしめてしまい…
第一章
始まり
「ラウル! ダウン!! ダウン!! 沼田逆転ノックアウト勝ちです!!
これは驚きました! これは驚きました!!」
実況アナウンサーの興奮した声がテレビから響く。
「うぁっー!!」
興奮して叫んだのはアナウンサーだけではない。父も祖父も、ボクシングを見もしない私でさえ大声で叫んでいた。
〝凄い!!〟
テレビにくぎ付けになり
「なに! なに!! 今のなに!?」
父に喰いついて、マシンガンのようにボクシングについて質問を浴びせかけた。私の問いかけに父は嬉しそうに
「ボクシングは、プロレスとはまったく違う。体重による階級があって、ボクサーはまず自分の体重に勝たなければリングに上がれないんだよ」
「体重制限があるの?」
「そうだよ。ウェイトで細かく階級が分かれていてプロレスのようなショー性はなく、やるかやられるかの真剣勝負なんだ」
父の熱弁は続く。
〝お父さんって、本当にボクシングが好きだよね〟
少年のように顔を紅潮させて説明する父がおかしくて呆れてしまった。だけど、父をこんなに夢中にさせるボクシングには何かそれだけのものがあるのだろう。私は先程の沼田誠二の逆転KO勝ちの興奮冷め止まぬままに、父の話に聞き入っていた。
〝ボクサーって減量してからリングに上がって戦う。自分の階級まで体重を落としてトレーニングする。そこまで自分を追い詰めて、そんな過酷な状態で試合をするの? プロボクサーってどんな人だろう〟
衝撃を受けた。鳥肌が立った。中学生の多感期で感受性が強く、何にでも夢中になる年頃だった。この出来事が、私の人生に大きく影響を与えていくとは露とも知らず……。