回顧展

いつものように作品の制作を終え、少し涼しくなった時間帯を見計らって、画廊巡りに出掛けた。何件目かの画廊で「回顧展」という看板が目に留まった。

一般的に回顧展というと、名を成した大家か、もしくは画家の遺作を振り返るものだが、中に入ってみると、何と芸術大学3年生の女学生の回顧展だという。

ざわつく心を抑えながら、一点一点鑑賞していく。

自画像に始まり、石膏デッサン、人物画、セザンヌの模写、色彩分割による風景画、そして、抽象画へと、まるで美術の歴史を辿るように彼女の足跡が展開されていく。

それぞれの作品の端々に、才能の芽が見え隠れしているのを感じる。

このまま表現者として、長い道のりを彼女が歩んでいったとしたら、どんな作品がこの世に現れていただろうか。

そう想像すると、その道が閉ざされてしまった現実に呆然と立ち竦む。

片や、63歳になっても、代表作といえる作品を残せず、鬱々と表現活動を続けている自分の存在のなんと薄っぺらなことか。

穢れなく瑞々しく、若き葛藤の中でもがき苦しみながら創られたそれらの作品を、眩しくて私は正視していられない。

画廊を出る時、お母様と思しき婦人に声を掛けた。

「残念です。事故ですか、ご病気ですか」と尋ねると、婦人は「ご病気ですか」のところで、嗚咽しながら頷いた。

 

 

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