【前回の記事を読む】1980年代、歌舞伎町。ディスコでは男たちが、激しく踊りに熱狂しながらも、獣を狩るハンターのごとく女を物色していた
邂逅
その後もナンパが成立しないので、正春達は一旦(いったん)シートに戻りブレークタイムにした。
正春は愛好する何時(いつ)ものタバコ、セブンスターに火を付ける。
「今日は収穫ナシですねえ」不満顔で良が言うと、清次も「おうしょぼいな」と返す。
「そんなに焦(あせ)ることはないよ」
タバコの煙を吐き出しながら正春が俯(うつむ)き加減に話した。
追加オーダーした2杯目のウイスキーコークが2人より先にテーブルに置かれると、正春は半分程を一気に喉に流し込んで、気分を変えにトイレへ向かった。
ところが、ここで予期せぬ運命の出会いがあったのだ。
こっちは3人連れなので、グループで踊っている女子をナンパのターゲットにしていたが、次からは1人で踊っている女にシフトチェンジしようと話した矢先の事だった。
不慣れなホール内を見廻しながら歩いていると、丸テーブルに肘(ひじ)をつき、火が付いてない細長のタバコを指先でもて遊んでいる女がいた。この女はサーファーなのか肌が浅黒い。
正春は何気に立ち止まると、その時、互いに見詰め合う一瞬のコンタクトがあった。
不思議なことに周りの景色がその途端セピアカラーとなり、まるで時が止まったかの錯覚を覚えるのだった。
“これ迄出会った女とは何かが違う”
そんな衝動に駆(か)られる自分自身に驚きつつも、その女がいるテーブルにはナンパ続行中の男がいたので、ヤボな真似(まね)はしないと視線を直ぐに外(はず)したのだ。